今回読んだ「残酷すぎる成功法則」は競技会の技術向上のための本でもないし、そもそも社交ダンスの本ですらありません。
以前、書評を書いたときにも言ったように全く違う視線にたった時に「これは社交ダンスに活かせる!」と思うことは頻繁にあります。
この「残酷すぎる成功法則」は「成功法則」についての多くの出版物に対して科学的な証拠を突きつけて教えてくれます。
書店で平積みされた本書の帯の1文が目に入ったときには購入を決めていました。
成功者は社交的?→NO!第一線の専門家やトップアスリートの9割は「内向的」
これまでテレビに出るようなトップアスリートはどう見ても社交的のように見えていました。
内向的なことと第一線のトップアスリートにどのような関係があるのか気になるところです。
それでは内容を見ていきましょう。
第4章 なぜ「ネットワーキング」はうまくいかないのか
この章では人質交渉人、一流コメディアン、史上最高の頭脳を持つ人から人脈づくりの戦略を学ぶことが出来ます。
しかしこの本を読んだ目的は「社交ダンスの世界ファイナルに入ることと内向的であること」との因果関係でした。
社交ダンスの世界では政治的なジャッジが少なからず(?)あるので人脈づくりもファイナル入りの要因となるかもしれませんが、今回の趣旨とは違うのでこの記事ではとりあえず飛ばしておきましょう。
この章に内向型の性格について書いてあるところがありました。紹介します。
「内気な人ならでは」のとびきりの強み
ここでは様々なトッププレーヤーと内向性に関する調査や統計があります。
作家でオリンピックの金メダリストであるデビッド・へメリーによれば、トップ・アスリートのほぼ一〇人中九人が自分のことを内向型だと認識している。
「何より顕著な特徴は、トップ・アスリートの大部分、じつに八九%が自分のことを内向的だと思っている点だ――自分は外交的だと感じているものはわずか六%に過ぎず、残りの五%は自分は”中間”だと思っていた」
『残酷すぎる成功法則』P183
集団競技のアスリートは常に人に囲まれて外交的だと思われがちですが、トップクラスになるためにはバッティング・ゲージで過ごす孤独な時間、腕が上がらなくなるまで黙々とスリーポイント・シュートの練習をする時間が必要だと言っています。
またアスリート以外の分野でも独りで練習することが重要だそうです。
フロリダ州立大学教授のアンダース・エリクソンが、超一流のバイオリニストに、日常の活動で技量を磨くために最も大切なことは何かと訪ねたところ、「独りで練習すること」と九〇%の演奏家が答えている。
では、トップクラスのチェスプレーヤーの今後を予測する材料は何か?これもまた、「独りで真剣に練習」しているかどうかだ。実際、古参のトーナメント・プレーヤーのあいだでは、独りでの練習時間のみが統計的に重要な予測因子だった。
『残酷すぎる成功法則』P184
というように様々なトッププレーヤーで独りの練習が重要だと本書では述べています。
それでは社交ダンスの場合を考えてみましょう。
社交ダンスに当てはめて考える
社交ダンスで考えると独りの練習といえばシャドー練習に当たりますね。
この記事でも書いたように社交ダンスの上達にはシャドー練習が不可欠です。
もちろんカップル練習も重要ですが、カップル練習の時間と成績は比例しないことは歴代の世界ファイナリストを見ても明らかです。
世界のファイナリストがカップル解消、そしてニューカップルということがあった際も元ファイナリストたちは無事にファイナリストであり続けていました。
世界のファイナリストがカップル歴と関係なく成績を収めていることを考えると、「個」の実力が決勝入りに重要な要素なのは明らかなのではないか、と考えるのは自然なことですよね。
カップル練習で確認したことをシャドー練、レッスンで習ったことをシャドー練、身体能力が足りなければトレーニング、ストレッチ、どれも「独りで練習」することです。
もちろんカップル練習も大事です。
「残酷すぎる成功法則」で例に上げていた野球やバスケットボールでもチームの練習にプラスしてバッティング練習やシュート練習を行って初めてトッププレーヤーとなれるのです。
なので社交ダンスの場合はカップル練習は当然して、更にプラスしてシャドー練習で自分を磨き上げることで世界ファイナルへの道が開けるのではないでしょうか。
ファイナルの鍵はシャドー練習、という仮説:まとめ
断っておきますが、「残酷すぎる成功法則」はトップアスリートになることを推奨しているのではありません。
トップアスリートや世界の著名な人は人間関係やその他の部分で問題がある場合が多いという統計もあります。すべてがそう、というわけではありませんが。
どういう人生を送ることが成功といえるのかは人それぞれです。
成功はさまざまな形でやってくる。信じられないほど鮮烈なもの、シンプルなもの、風変わりなもの、滑稽なもの――。私たちはよくメディアで見るような成功の極みに憧れ、重要なのは自分なりの成功だということを忘れる。自分オリジナルの成功を定義してこそ、それを達成できるのだ。
『残酷すぎる成功法則』P352
世界のファイナリストやチャンピオンになるには諦めなければいけないこともあるかもしれません。
自分自身が追い求めている結果を掴み取れるように、まずは己を知りましょう。
願わくば日本から世界チャンピオンが誕生しますように。
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